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RIA-UI道場
「ゴムのユーザー」って何?
2009年5月
text by 伊良波朝賞(リンコムネクスト事業部)
前回はペルソナを実際の開発に取り入れようとしようとした場合に直面しそうな問題について考えてみました。その中でいくつか列挙しました、「ペルソナを認めない理由」を考えたとき、ほとんどは社内の都合によるものと気がつきました。残念ながらそこにはユーザーのことを考える視点がないのです。
通常、自分一人だけで開発を行うことはないと思います。「要求分析」や「設計」「開発」と分業で仕事をすることがほとんどである以上、全てのチームメンバーが直接エンドユーザーと話をすることは少ないと考えられます。「ユーザーのことはこれ以上知る必要がない」くらいに熟知しているというケースはよほどのことがない限りありえないでしょう。また、直接ユーザーと話す機会があったとしても、数人からもらったフィードバックがその他大勢のニーズとピッタリマッチしているとは考えにくいのです。しかし、実際には一部の「声の大きなユーザー」の主張に引っ張られて開発が進められるケースが多いのではないでしょうか。無論その声の大きなユーザーは製品の将来の発展や進化する方向などということは毛頭にないでしょう。自分にとっていかにメリットがあるか、ということが最大の関心事なはずです。このような状況では確からしい判断をするのは難しいのではないでしょうか。
■ゴムのユーザー
このような状況下で開発する場合、開発者同士が「ユーザーにとってどちらが使いやすい操作なのか?」といったことを議論すると、お互いが都合のいい空想のユーザー像を作り上げてしまうおそれがあります。「この場合ユーザーはきっとこんな風に利用するだろう」であったり、「いや、ユーザーはそんなことはしない、むしろこっちのほうが使いやすいに決まっている」といったような議論が繰り広げられ、話がカラ回りすることがあるのではないでしょうか。このような状況を、ペルソナ・シナリオ法の提唱者のアラン・クーパー氏は「ゴムのユーザー」という言葉を使って表現しています。自分に都合のいいように作りあげられ、コロコロと姿を変えるユーザー像は、まるでゴムのように伸び縮みする人形のようであり、実際にそんなユーザーはいないことを表しています。
詳細設計でカバーできないような細かな動作は、開発者に対応を委ねられますが、このとき、ユーザーが利用する状況を1人ひとりの開発者が把握していると「使いやすい」仕上がりになるのが期待できます。逆に、どんなに高性能で高機能な製品であっても、使う人の仕事の流れや、利用シーンのコンテキストに合致していないと、決して利用者の生産性は向上しません。場合によっては、やがては利用されなくなってしまうおそれすらあります。
ペルソナは多くのユーザーの代表です。ユーザー像が明らかな場合はあえてペルソナを登場させなくてもいいかもしれません。また、何がなんでもペルソナを利用すべきだと言うつもりはありません。しかし、ユーザーの顔がはっきり見えないときや、開発チームがバラバラなユーザーを想像してしまうようなときには、ペルソナの効果は絶大なのです。
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